やさしいヨガ哲学:真我とは
ヨガの語源は「ユジ」
ユジというのは、馬と荷車をつなぐ器具「軛」のことで、その呼び方から転じてヨガと呼ばれるようになったと言われています。その意味は、「別々のもののように見える2つ以上のものをひとつに繋ぐという意味をもちます。
「軛を装着する」ということは「(牛や馬と荷台を)結びつける」という意味。そこから「心を一点に集中させる」という意味が生まれた。
牛や馬のようにつねに動きまわり、ときに暴れ、なかなか捕らえることができない私たちの「心」を一点に結びつけて集中させ、進むべき方向に向かわせる。それが「ヨガ=結びつける」ということ。
自分と他者、異なるはたらきをもつものをひとつに繋ぐ、またはそれらを一体と感じるような感性を磨くことを、ヨガといいます。
現代人にこそ必要なヨガ
現代人は、本来一体となりはたらくべき「体」と「心」がバラバラになってしまっている。
忙しい毎日、物質的な豊かさはあたりまえになって、1クリックで欲しいものが手に入る。あらゆる情報があふれ、全てが高速化され、思考だけが優位になってしまい、体験が不足し、肉体がついてこない。
この現象を馬車に例えるなら、馬(心)が暴れまくってしまい、荷台(肉体)が思うように動かない状態。逆に荷台(肉体)がうまく動かなければ、それを引く馬(心)がいくら頑張っても前に進まないだろう。
仏教においても「心身一如」と言い、心と体が切り離すことのできないひとつのもの、一体であると説いている。
つまり、心と体が一体となり、バランスをとりながら、うまく連動する(つながる)必要があるのです。
ヨガの練習により、生活習慣を改め、身体を整え、呼吸をコントロールし、意識を集中させることができるようになると、それによって、心は安定し、自分の望むような人生を歩むことができます。
真我(しんが)とは
真我とは、真実の自己自身のこと。
人は、生まれたときの純粋な姿から、発達成長と共に、複雑な感情や思考を身につけていきます。
私たちが「自分」と思っている姿には、さまざまな要素が絡み合っていて、真実の自分自身からはかけ離れているということも少なくありません。
人から評価・定義された自分の姿、親や教師から躾けられた自分、自身で獲得した思考や観念、欲や無知から生じる我欲などの個人的な意識をまとう自己から、余計な鎧を取り外して、その中心にある「真実の自己自身」こそが「真我」です。
また、真我について理解を深めるためには「魂とは何か?」ということについての基礎理解が必要になってきます。
私たち人間は、この世界(三次元の物質的社会)に生まれてくることは、魂の修行のためであると説かれています。東洋思想においては、人は肉体の死を迎えても、何度も生まれ変わり、この世に生まれてくると考えられています。
これを「輪廻転生」と言います。
魂というと、心霊現象とか、ひとだま…みたいなものを想像する人もいるかもしれません。
ここでいう魂とは、私たちの命の根源をなすエネルギー体のことを言います。
この「魂」というのは何世代にも渡り、幾つもの人生を体験していくのですが、今世における魂の宿った「私」の本性こそが「真我」なのです。
ヨガにおける真の目的は「真我」をみつめること
ヨガ・スートラではヨガを次のように定義しています。
「YOGAS CHITTA VRITTI NIRODHAH:心の作用を止滅することが、ヨガである」(第1章2節)
「TADA DRASHTUH SVARUPE VASTHANAM :そのとき、純粋観照者である真我は、自己本来の状態にとどまる」(第1章3節)
私たちの心は、日々、瞬間瞬間に絶えず、様々なことを思い、考え、悩み、喜び、憂いながら生きています。人間の心は、つねにとどまることなくはたらいているのです。
静かに瞑想しているときでも、心を今この瞬間の感覚だけにとどめておくことは容易ではありません。
瞑想や呼吸法、アーサナや調整法を通して学ぶべき道は、心のはたらきを静めて、やすらいだ充足感・幸福感に満たされた状態へと近づくことです。
人間の苦悩のもとになっているのは心のはたらきであり、そこからはなれ、執着から解放された状態へと近づき、真の自己自身、とらわれのない真我(プルシャ)を体感することこそ、すべてのものとの一体感を感じることが「悟り」の境地であるのです。
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著者:高橋由紀 Yuki Takahashi 株式会社ベビーヨガアソシエイトCEO・一般社団法人ボディセンス・インスティテュート代表理事。 現在は、Baby Yoga®、骨盤調整ヨガ®、RODY YOGA®などを始めとする赤ちゃんからシニアまでの各種ヨガプログラムの指導者育成を行う。2008年より現在までに、海外を含む日本全国に1,000人以上のヨガ指導者を育成。大学や研究機関との研究活動のほか、全国での講演活動、書籍やDVDの出版、メディア出演など多数。 |
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