やさしいヨガ哲学:ヨガの八支則
ヨガとは、本来、身体を動かすポーズだけでなく、呼吸法・浄化法・ヨガ哲学・瞑想法などを包括した、より良く生きるための智慧です。
その教えを8つのプロセス・段階に分けたものを「八支則=8 Limbs」と言います。
現代における「ヨガ」という言葉は、単にポーズを練習することを示すことが多いですが、古代から伝承された「ヨガ」とは、私たち人間が、より生きやすく幸せになる道を伝えるものでした。
8つのプロセス・段階を示す「ヨガの八支則」とは
- ヤマ(禁戒・悪いことをしない)
日々の暮らしの中で「してはいけない5つのこと」を学び、実践する - ニヤマ(勧戒・善いことをする)
日々の暮らしの中で「するとよい5つのこと」を学び、実践する - アーサナ(体位法・ポーズ)
肉体を通した鍛錬・ポーズを練習し、体のバランスを取る - プラナヤーマ(呼吸法・調気法)
呼吸をコントロールし、呼吸法を学ぶ/気の流れを整える - プラティヤハーラ(感覚の制御・内観力を高めること)
意識や感覚のコントロールを学ぶ/自らの内側との対話 - ダーラナ(集中・凝然)
意識の集中、一点に集中することを学ぶ/心を定める訓練 - ディアーナ(瞑想)
深い瞑想を学ぶ/エネルギーの統一 - サーマディ(深い瞑想状態と融合した悟りの境地・三昧)
神と一体になる(すべての命に神が宿るという考えの元に)/悟りへの境地
八支則には、段階ごとの達成目的があり、その実践方法も具体的に示されています。8段階は大きく3つのテーマに分類できます。
それは、「生きる上での行動指針・自身の日々の生活・人との関係性」「身体の健康および機能向上・身体を整えること」「精神の鍛錬・心を整えること」の3つです。
古代から受け継がれるヨガの最終目的は「心身ともに健康であり、幸せで穏やかな自分で生きられること」で、その目的を達成するために、この八支則すべてを段階的に実践していくことが肝要だと教えてくれています。
ここでは、八支則それぞれのプロセス・段階の解釈についてお伝えします。
テーマ1:
生きる上での行動指針・日々の暮らしや人間関係を整える
ヨガでは、ポーズや呼吸法の練習をするよりも前にまず、日常生活や習慣、人との関係性を見直すことから始めることとされています。「ヤマ・ニヤマ」について、詳しくはこちらをお読みください
1段階目:ヤマ(禁戒・悪いことをしない)
- アヒムサ(非暴力):すべてのものを慈しみ、自分も、誰も、何も傷つけない
- サティヤ(正直):本当の自分をあざむかない。誠実に、純粋になっていく
- アスティーヤ(不盗):欲望から、または無知から、盗むことを止める
- ブラーフマチャリア(禁欲):欲を適切にコントロールする。何ごとも「し過ぎない」「溺れない」
- アプリグラハ(不貪):本当に必要な量だけでよいと考える。「もっともっと」とむさぼらない
2段階目:ニヤマ(勧戒・善いことをする)
- シャウチャ(清浄):身体も心も清らかに保つ。純粋になっていく
- サントーシャ(知足):すでに満たされていることに気づく
- タパス(苦行):やるべきこと、目の前のことを逃げずに粛々と行い続ける
- スワディヤーヤ(読誦・精神向上のための学び):書物を読み知識を得る。自己探求のための学び
- イシュワプラニダーナ(神への祈り):すべてを受け入れ、抗わず、委ねること
テーマ2:
身体の健康および機能向上・身体を整える
「ヤマ・ニヤマ」で生活習慣や人との関係性を見直すことができてはじめて、次の段階にすすみます。
次のテーマは「身体を整える」です。現代におけるヨガのイメージは、ここに挙げる3~5段階のこと。
3段階目:アーサナ(体位法・ポーズ)肉体を通した鍛錬・ポーズを練習し、体のバランスを取る
様々なポーズを行うことで身体の不調や歪みに気づき、自らの力で整えることです。第6段階以降に続く長時間の瞑想にも耐えられる、安定した身体づくりが目的とされています。身体と心は繋がっているので、身体を整えることで心を整える目的もあります。
4段階目:プラナヤーマ(呼吸法・調気法)呼吸をコントロールし、呼吸法を学ぶ/気の流れを整える
プラーナヤーマとは、気の流れを整えること、おもに呼吸のコントロールです。呼吸の調整を通して、心身を整えることが目的とされています。
呼吸の効果を最大限に引き出すためには、正しい姿勢を保つことが不可欠ですので、プラーナヤーマの前段階にアーサナを行うという段階を示されていること(ヨガの八支則)は理にかなっていると言えます。
5段階目:プラティヤハーラ(感覚の制御・内観力を高めること)意識や感覚のコントロールを学ぶ/自らの内側との対話
プラティヤハーラとは、味覚・聴覚・視覚など五感を通して外側から入る情報に対して、自身の感覚をコントロールする訓練です。目を瞑ると体感覚や聴覚がより際立って感じられたり、何かに集中しているつもりでも、痒みや痛みがあると、そちらに意識がいってしまって集中できないなどということはありませんか?
プラティヤハーラは感覚・感情に左右されない心の強さを育てることが目的です。これが出来るようになると、自分の外側の影響に惑わされないブレない自分軸を持つことができます。
八支則の第五段階は、身体を整えるというテーマから、心を整える段階への転換期と言えます。
テーマ3:
精神の鍛錬・心を整える
八支則の6段階目からは、心(精神)を整えるステージとなります。これまでの段階とは異なり、段階ごとに区切りはなく、すべての段階が一体となって学んでいくものと考えられています。
6段階目:ダーラナ(集中・凝然)意識の集中、一点に集中することを学ぶ/心を定める訓練
ダーラナは、心を整える最初の段階です。何か1つの対象物に意識を集中させる練習です。よく知られている練習法としては、キャンドルの炎を見つめ、瞑想状態に導く方法です。ダーラナの練習がすすむと、自らの意志で、集中力を高めることが出来るようになります。
7段階目:ディアーナ(瞑想)深い瞑想を学ぶ/エネルギーの統一
ディヤーナは、前段階のダーラナの状態がさらに深まった瞑想状態のことです。ダーラナでは自分の意志で集中力を高めていましたが、ディヤーナでは努力をしなくても集中を継続出来ている状態のことを言います。
修行がすすむと、瞑想をしようとしてするわけではなく、座っているときも、歩いているときも、自然と瞑想状態に入ってしまうような境地に近づいていきます。
この状態に入るためには、前段階のプラティヤハーラ(感覚の統制)とダーラナ(集中・精神統一)がさらに深まり、自分の外側からの影響を受けずに心を穏やかに保たれている状態を保てないと到達できません。
8段階目:サーマディ(深い瞑想状態と融合した悟りの境地・三昧)神と一体になる(すべての命に神が宿るという考えの元に)/悟りへの境地
ヨガの最終目標とされている状態です。悟り・解脱などともいわれます。この境地に入ることができると、仮にそれが一時的な体験であったとしても、周囲の環境に左右されることもなくなり、現代社会における物質的な世界における人々の苦悩とは無縁の境地となっていきます。
この経験から導き出すことのできる「真理」とは、人の苦悩の元は、外側からの影響によってもたらさるものであり、真の自己自身、穢れのないプルシャ(真我)は、苦しみもない安穏な境地にあるのだということです。
ヨガとは、仙人や神様になるための修行ではなく、この物質的で情報社会の現代において、人が「本当に大切なもの・こと」に気づくための道を示すものなのです。
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著者:高橋由紀 Yuki Takahashi 株式会社ベビーヨガアソシエイトCEO・一般社団法人ボディセンス・インスティテュート代表理事。 現在は、Baby Yoga®、骨盤調整ヨガ®、RODY YOGA®などを始めとする赤ちゃんからシニアまでの各種ヨガプログラムの指導者育成を行う。2008年より現在までに、海外を含む日本全国に1,000人以上のヨガ指導者を育成。大学や研究機関との研究活動のほか、全国での講演活動、書籍やDVDの出版、メディア出演など多数。 |
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